萬ムービーフェス座談会【前編】
撮影・編集お疲れ様でした! ということで、参加団体が集まって制作の手ごたえやお互いの作品の感想を語り合う、座談会を開催しました。時期が時期なのでオンラインにて、6団体ずつ集合。今回は前半の模様をお届けします。
参加団体
・演人の夜
・劇団ヨロタミ
・劇団YAKAN
・チームまん○
・風凛華斬
・レティクル座
萬劇場(以下、萬):お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。早速ですが、本日はまずランダムに順番決めをして、
①制作の手ごたえを語る
②その作品への感想を他の団体が語る
という流れでいきたいと思います。
演人の夜『世界はifでできている』
萬:それでは、1番の演人の夜さん、制作の手ごたえをお願いします。
演人の夜(以下、演):映像をつくるのは今回が初めてでした。まず編集ソフトを探すところから始めて、おすすめソフトまとめにあった一番上のをダウンロードして、動画の編集をやっている方からアドバイスをもらいつつ、「こんな感じなんだ……」と。完成した時はホッとしました。
萬:では、演人の夜さんの作品『世界はifでできている』について、2番のヨロタミさんからご感想をお願いします。
ヨロタミ(以下、ヨ):映像の乱れは全部編集で加えたんですよね。画面がチカチカしたり。
演:はい。
ヨ:すごく世界観があるなと思いました。
演:ありがとうございます。
レティクル座(以下、レ):ノイズの音がすごく良かったんですけど、あれ何の音ですか?
演:裏話になるんですけど……台本通りに全部撮影したはずが、編集の段階になってデータが破損してまして。
一同:(悲鳴)
演:終盤にビリビリってなるところは壊れたデータの音源をそのまま使ったんです。
一同:へー!
レ:偶然の産物だったんですね。
演:結構焦りましたけど(笑)、あの音から新しい編集を思いついたりもしました。
※以下、司会進行や御礼の言葉は割愛します。
劇団ヨロタミ『サークル』
ヨ:集まれる日が一日しかなく、本当は一眼レフで撮りたかったんですけど、いつも稽古で使っているホームビデオカメラで撮りました。フリッカー(チラツキ)を消すのが大変で……。でも、レコーダーの音質は案外良くて、それだけは楽でした。あと、萬支配人の飯村さんに出演をお願いしまして、芝居がすごく自然でした。
YAKAN(以、Y):もともと舞台の作品ですよね。最後の歌とダンスと入るところがすごく良かったです。映像なのに劇場感が伝わってきました。
ヨ:実は最後のシーン、一人ずっと社会の窓が開いてて……
Y:え!(笑) 気づきませんでした。
ヨ:映らないように編集するのが大変でした。人が消える演出はどうやったんですか?
Y:人ありの映像と人なしの映像を撮って、人ありの映像を薄くして重ねました。基本的にずっと手持ちで撮ってたんですけど、あのシーンだけ三脚を使いました。
一同:なるほど……!
チームまん○(以下、○):舞台でも拝見しましたが、あの5色の衣装は映像のほうが映えますね。
ヨ:もうだいぶ使いました。衣装にお金かけることは普段あまりないので、減価償却しようとしてます(笑)。
劇団YAKAN『シアターデッドディスタンス』
Y:劇場で映像を撮るのは初めてで、いかに「劇場」という部分を活かすかを考えました。時間がなかったので、終盤は急遽手持ちで長回ししたんですが、それが功を奏した部分もあると思います。
○:映像らしい感じがすごかったです。フィルターは後入れですか?
Y:はい。入れる前提で撮影しました。
O:終盤もカット割りしてますけど、全部長回しだったんですね。
Y:ええ、10分間ノーカットで大変でした。一回噛んだら全部やり直しで……
O:でも演劇ってそうですよね(笑)。
ヨ:主宰の藍田さんの芝居が抜群でした。阿部サダヲみたいで、見ていて飽きないです。
チームまん○『演劇と映像の狭間』
○:もともと映像撮ってたんですけどもう20年ぐらい前で、現在の編集環境で撮ったのはほぼ初めてみたいな状態でした。当初は劇中の作品(『効果音X』)をそのままやる予定だったんですけど、実は途中まで撮ったところで体調を崩しまして……
一同:えー!
O:残りが取れず、辞退も考えたんですが、結局無理やり付け足して、あれが出来ました。
風凛華斬(以下、風):この作品、出演させていただいたので、残りはどうするのかなと思ってたんですが、「うまいなあ~」と感心しました。よく思いつきましたね。言ってることもちゃんとしてるし。
ヨ:小山さんご本人が面白いです。『効果音X』は去年の夏の短編集の作品ですよね。すごく面白そうに見えました。去年見られなかったのが残念です。
風凛華斬『closed theater』
風:絵コンテの描き方も知らなかったので、とにかく必死でした。うちはたまたま2日連続で使わせていただいたので、撮影自体は楽でしたけど、編集を丸投げされた末次は相当大変だっただろうと思います。
レ:たくさんバージョンがあるのがすごいですね。
風:末次のアイディアなんです。「ホラーだから、見られない人がいたら困る」……と。
レ:なるほど。全部拝見したんですけど、効果音付きのが一番好きでした。
ヨ:YAKANさんもそうなんですけど、ちゃんと距離を取って成立するように考えられているのがすごいと思いました。
Y:いろんな角度から撮っていて、迫力がありました。上からのカットはどうやったんですか?
風:あれは脚立に上って撮りました。
レティクル座『無観客』
レ:うちは一切編集をしてないんですけど、客席並べたりバトン降ろしたり、準備が大変でした。あと、お客さんがいないということに役者が動揺してました。
演:ワンカットで撮ったのはすごいです。この作品はリモートっていう設定ですよね。物理的には近くにいるのに、リモートの微妙な距離感がよく出ていました。もしかしてラーメンズお好きですか?
レ:いえ、FLASHで見たことあるぐらいですね。
風:画面上のコメントを見てるっていうのが視線の演技で伝わってきました。
ヨ:ワンカットに挑戦するのは、演劇をやっている人間として素晴らしいと思います。並んだ椅子を見てちょっと涙出ました。カメラの引き方もきれいでした。
時短テクについて
萬:皆さんのお話を伺っていると、撮影が1~2日しかないという時間のなさで苦労されたようですね。募集開始から撮影のスケジュールもかなりタイトだったと思いますが、どうやって切り抜けてきましたか?
レ:うちは事前にリモートで稽古していきました。題材があれなので、稽古のほうが撮影本番よりリアルっていう(笑)。
ヨ:早めに台本を渡しておいて……あとは編集で何とかするつもりでした。
風:うちも早い段階で役者に台本を渡しました。事前に稽古はしなかったんですけど、渡しておけば覚えてきてくれるだろうという信頼がありました。
Y:うちも台本を先に渡してあったんですけど、実は当日役者が一人来られなくなってしまって、知り合いの役者に急な代役をお願いしたので、そこだけちょっと苦労しました。
ヨ:まん○さんの追加のシーンは一人で撮ったんですか?
○:はい。いかにも自然らしい感じにするために読み間違いみたいなのも全部書いて、カメラプロンプターを見ながら撮影しました。
演:うちは一回だけ事前にリハ的なことをやって、あとは当日、場当たり兼ゲネみたいな感じで全部進めていきました。
この萬ムービーフェス、時間のなさを含め色々な制約がある中で作るというのが、劇団の皆さんにとって貴重な体験となったようです。今後の創作活動の糧になることを期待します!
座談会の後編もどうぞお楽しみに。